コラム&事例 l 株式会社日本能率協会コンサルティング TPMコンサルティングカンパニー (JMAC): コンサルタントが語るモノづくり・人づくり (第4回: 上埜 安英)
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コンサルタントが語るモノづくり・人づくり (第4回: 上埜 安英)

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「自主保全」ステップ毎の留意点について
=目次=  ・・・2010年2月公開
1.第1ステップ 『初期清掃(清掃点検)』 の留意点
2.第2ステップ 『発生源・困難個所対策』 の留意点
3.第3ステップ 『自主保全仮基準の作成』 の留意点
4.第4ステップ 『総点検』 の留意点
5.第5ステップ 『自主点検』 の留意点
6.第6ステップ以降 『標準化、自主管理の徹底』 の留意点

◇ 参考資料: 自主保全ステップ展開の例
◇ コンサルタント プロフィール紹介

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 TPMを推進する企業の多くが、活動を通じた人材育成にも大きな期待を寄せています。そのなかで、自主保全は7ステップの展開を通じて重要な役割を果たしています(下図)。 今回、そのような視点でステップ毎の留意点をまとめてみました。 

自主保全の7ステップでなぜ人が育つか
 

1.第1ステップ 『初期清掃(清掃点検)』 の留意点

エフ付けを徹底して実践する
 エフ付けは、『設備に強いオペレーター』の第1条件(=設備の不具合を見つける能力を持っている)を満たすためには、どうしても必要な活動です。オペレーターが気づかない不具合は管理者がどんどん指摘すべきで、エフ付けが軌道に乗るまでは、たとえば「設備1台あたり50枚」など、具体的な目標枚数を決めて進めることも必要です。

現場にあった不具合レベルを見極める
 一例として、半導体工場と機械加工工場では、錆に関して不具合のレベルが異なることがあげられます。半導体工場での錆は程度に関係なく不具合ですが、機械加工工場などでは、すべての錆にエフを付けると膨大な数になる場合があります。 第1ステップでは、「ワークに接する場所の錆のみを不具合とする」といった現実に即した判断も必要です。


2.第2ステップ 『発生源・困難個所対策』 の留意点

復元と改善の違いを理解する
 エフ取りとは、エフを付けた不具合を復元する(元に戻す)ことです。これは決して改善ではありません。メンテナンスの基本は復元です。復元は維持管理活動の基本であり、「まず復元する」ことの大切さを理解してください。

 一方、改善は文字通り「よきに改める」活動で、考えを行動に移す行為であり、オペレーターのレベルアップには欠かせません。第2ステップでは、発生源困難個所、清掃・点検困難個所対策として改善活動を進めます。この段階では、カバーを外すために六角ボルトを蝶ネジに変更した、といった内容でも構いません。要は、どうやり方を変えたのかが大切なのです。

改善はQCストーリーで進める
 QCストーリーは、問題を解決に導くのに非常に有効な手順です。改善にあたっては、手順をきっちりと理解していることが必要です。また、QC7つ道具など基本ツールの教育も軽視してはいけません。改善活動には、固有技術もさることながら、管理技術も必要です。なぜなぜ分析やPM分析にしても、QCストーリーの中で使って初めて成果に結びつくのです。


3.第3ステップ 『自主保全仮基準の作成』 の留意点

オペレーター全員がきちんと守れる仮基準にする
 第3ステップは維持管理のための最初の段階といえます。決めたことを守るのは「言うは易く行うは難し」で、特に他人から押しつけられた基準は守られにくいものです。自主保全仮基準は自分たちで決めるのが基本で、「守れるはず」ということになっていますが、現実に全員が守っているかは怪しい場合も多くあります。

 この段階で一人でも守れないオペレーターがいると、ステップが進めば進むほどますます守れなくなります。全員が守れるように徹底することが重要です。


4.第4ステップ 『総点検』 の留意点

故障ゼロ達成のための重要ステップであることを認識する
 第4ステップでは設備総点検のための技能教育と、総点検実施による微欠陥摘出・復元を行います。そのためには多くの工数と費用がかかりますが、このステップを疎かにしてはいけません。

 私の経験では、総点検の結果、第1ステップと同じくらいのエフが付く場合が多くあります。まだまだ設備に不具合が残っていたということです。また、オペレーターの不具合を見る目が上がったことの証明ともいえます。この第4ステップを簡単に済ませては、故障ゼロ化は達成できません。

総点検教育を担当できる人材を育てる
 第4ステップがうまく進まない理由として、設備の機構・構造、要素部品について教える人材がいないことをよく聞きます。確かに小さな事業所では適当な人材がすぐにはいないかもしれません。しかし、TPMをスタートしたときから、いずれ第4ステップが来るのは分かっていることです。真剣に早くから人材を育てる努力が必要です。  


5.第5ステップ 『自主点検』 の留意点

故障、チョコ停、不良が確かに減ってきたというレベルを達成する
 第4ステップまでの内容がきちっと実施されていれば、職場は見違えるほど変わっているはずで、第5ステップは維持管理の第2次段階と捉えることができます。一般的に故障、チョコ停、不良は自主保全の成果指標として扱われることが多く、これらが「目標数字に対してどうだったのか」 にこだわって評価してほしいと思います。 


6.第6ステップ以降 『標準化、自主管理の徹底』 の留意点

 第6ステップ以降で考えるべきことは、「永続的に人を育てる仕組み」を作り上げることで、そのためにはゼロ事例への挑戦が有効です。ゼロ事例への挑戦を通じて、次のような成果が得られるからです。

新しい管理技術が身につく
 ゼロを目指すためには、従来の要因解析手法だけでは不十分です。そのためPM分析、FMEA、実験計画法などの新しい手法を学び、改善の過程で実際に使いこなすことができるようになります。

現象を細かくみるための測定技術、解析技術が身につく
 起きている現象を肉眼で見るには限界があります。真の原因を見つけるには、肉眼で見えないものを見える形にする必要があります。そのためには振動解析、熱解析、高速ビデオ解析などの新しい測定技術を学び、使いこなさなくてはなりません。

先輩・スタッフから固有技術・技能を学び、身につける
 固有技術や技能は人が長い間に自然と身につけてきたものが多く、とくに技能はもっている本人も分からないことが多くあります。そこで、CUDBAS(クドバス)手法などを使って現場の技能を洗い出し、次に自分の弱い技術・技能を先輩、スタッフから学ぶことによって身につけるのです。

 このように新しい管理技術、固有技術を身につけ、さらにそれを実践することで、今まで不可能と思っていたゼロを達成することができます。そしてそれが「やればできる」という意欲、自信につながっていくのです。 

 

-最後に-
 オペレーターを取り巻く労働環境は大きな変化を遂げていますが、TPMにおいて自主保全が最重点の活動であることは、今も昔も変わりません。それは自主保全が、「企業における人づくり」の重要な役割を担っているからです。今回の内容を皆さんの自主保全推進に役立てていただければ嬉しく思います。

 

◇ 資料 : 自主保全ステップ展開の例

自主保全ステップ展開の例
 

◇ コンサルタント プロフィール紹介
 (株)JIPMソリューション TPM総研
  技術主幹 チーフTPMコンサルタント  上埜 安英 (Yasuhide Ueno)

大手機械メーカー(機械工具、工作機械、ロボットなど)で、長年JIT・TQC・TPMなど体質改善の推進業務に従事。1982年から担当したTPMでは、PM分析や品質保全の開発に携わり、TPMの技術基盤強化に大きく貢献した。

1999年に日本プラントメンテナンス協会(JIPM)に入職。 2005年のJIPM分社化にともないJIPMソリューションに転籍し、2006年より現職。コンサルティング業務のかたわら、工学系学生向けの講座(データマイニング)を毎年担当。趣味は、鉄道模型、スキー。


※ 関連情報: すぐわかる自主保全入門
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